ストレスフルな社会。先輩との猿山の決戦の話。

仕事

営業という仕事はつねに何らかのストレスと向き合って仕事をするものだと思う。それは営業成績が絶好調で仕事をするのが楽しくて仕方がないというときも例外ではなく、顧客との折衝のもつれ、職場の雰囲気、人間関係、膨大な仕事量…大なり小なりみなストレスを抱えながら仕事をしていることだろう。人は現代社会をストレス社会と呼ぶようになった。

 

ストレスに苛まれ続けた場合人はどうなるのだろうか。何をやっても事態が好転することはなく、たとえ救いの手を差し伸べられようともそれは奈落の底へ引き込む悪魔の罠にしか見えることはない。そのようなストレス社会において人間関係が最悪だった時期があった。3年目の冬の出来事だった。

 

当時私のチームは営業4名(課長、先輩*2、私)だった。一時期は売上は低迷し辛い時期もあったが、年々売上も伸びてきており来年度には営業利益過去最高を超えることは間違いなく、さらなる拡販のため新入社員であった私が配属された。配属当初から仕事をばりばり振られおり、ついていくので必死だったがその分やりがいがあって、充実感にあふれた仕事をしていたように思う。

 

仕事が慣れてきたころ、アドバイザーだった先輩が海外支社に転勤することとなり、先輩の仕事を引き継ぐこととなった。私の扱う商材は世界中がマーケットであり、海外・国内の連携が非常に大切で出向後も先輩・後輩の関係性は変わることはなかった。変わったのは国内営業窓口が私に変更となり、私の相談先は先輩ままだった。

尊敬する人の仕事を引き継ぐのはプレッシャーに感じていたが、今までのがんばりを認められたような気がして、試合前のわくわくとドキドキが入り混じった最高の高揚感を味わっていたのも事実である。しかしこれが悪夢の序章とは知る由もなかった。

 

仕事を引き継いでから約3か月後、すべてが順調!とは言わないが少しずつ得意先との信頼関係も構築できてきていた矢先クレームが発生した。扱ったことのないクレームだったため先輩に教えを乞おうと発生状況、対応案などをまとめメールし、電話を行った。

すぐに先輩は「この情報が足りないからここを調べてくれ」と指示してくれたので、その情報を調べていたところ先輩からこんなメールが来た。なぜか部長、課長、関係者全員がCC入ってである。

 

「お客さんからクレームが発生したとの電話が来たので忙しいようなので私が代わりに対応しました。○○をするようにお願いします。」

 

10分前に電話で相談した案件について先方から電話があるなんて不思議なこともあるものだな、としか思わなかったがこれをきっかけに先輩からの”介入”が増えてきた。

何か相談すると、「お客さんから電話があったのであなたの代わりに対応しました。」

何かミスをすると「私ならこんなミスしなかった。反省するように。私が代わりに対応しました。」

なぜ窓口である私を飛び越えてお客さんと会話する必要があるのだろうか?

鈍感な私もいよいよおかしいと思い始めたころ決定的な事件が発生した。先輩が駐在してから半年後の出来事だった。

 

得意先に販売している主力商品が海外メーカーの格安製品に置き換えられようとしているという情報を入手した。すぐさま部課長・先輩に相談し、切り替え阻止のために先方と打ち合わせを開催することとなった。切り替えの要因が価格だったためベスト価格を先輩より受取、この日のためにシミュレーションを重ね、打ち合わせに臨んだ。打ち合わせはシミュレーション通り進み、ここぞというタイミングでベスト価格を先方に提案することができた。

 

これは置き換えを阻止できる!と思った矢先先方より

「先輩さんよりベスト価格は○○円と伺ってますけど違うんですか?」

 

どうやら私に伝えていた価格よりも先に安い価格を提示していたようだ。その先はあまり覚えていないしこれが決定打となったかどうかは定かではないが、結果として海外メーカーの格安材に置き換えられたのは事実だ。大切な打ち合わせで自社で意思疎通ができていない企業の製品を使いたがらないというのは言うまでもないだろう。

 

この時今まで抱え続けていた疑惑が確信に変わった。先輩は味方ではなく敵である。敵ならば敵なりの対応をしよう、そう思ってからは行動が早かった。自分から情報を与えることはやめ、先方にも根回しを実施してお客さんと自分との関わりを物理的に切ってもらうこととした。しばらくは先方に電話が言っていたようだが、「すべてきたのさんに話しているのできたのさんに聞いてください。」と回答してもらっていたら次第に電話することはなくなったらしい。こうして私の生活に平穏が訪れた。

 

当時は彼のやることなすこと意味不明であったが、今思うと彼は臆病なボスザルだったのかもしれない。そのお客さんの商売を大きく拡大させたという自負があったようで、「この商売は俺が育てた」と事あるように言っていた。転勤による引き継ぎとはいえ、いわば自分の築き上げた”猿山”を”脅かす存在である私を攻撃し、陥れることで「このビジネスのボスは俺だぞ」と主張しようとしていたのだ。チームスポーツを続けている私は一緒に猿山を大きくしようと彼との協力を求めてきたが、彼の目には私は愚かな侵略者のように映っていたのかもしれない。協力者と侵略者が相まみえることはないのは当然のことだろう。

 

彼と縁を切ってから1年以上経過し、”私の猿山”は順調に大きくなってきている。今の猿山を見て彼はどんな行動をとるのだろうか。再び猿山を奪いに来るのか、新しいボスザルに従うのか、今となっては知る由もない。

 

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